芦津集落エリア
芦津集落――広大な森林資源を有する林業集落
東山・沖ノ山の麓(ふもと)に位置し、智頭町内最大の山林面積を有するのが芦津集落である。智頭町中央部西寄りを北流する土師川流域は、花崗岩地帯で、連続した谷底平野が形成されている。これに対し、町東部は主に泥質片岩(でいしつへんがん)であるため谷は狭く、芦津はその中でも比較的まとまった平地を成す河岸段丘に集落を開いている。林業を生業とし、集落内の農地で米や野菜を育てて自給自足の暮らしをおこなってきた。特に明治中期以降は育成林業やスギ苗生産の拠点として、さらに沖ノ山森林鉄道の起点としても活況を呈(てい)した。
芦津集落は智頭町内でも最も谷奥に位置する。集落の中央部を縦断する道沿いに家屋が集まり、山裾と川沿いには水田が開かれ、土砂災害や水害から家屋を守る緩衝地の役割を果たしているかのような水田の配置が見られる。また、川の流れに沿って南東から北西に標高を下げる中で、比較的緩勾配(かんこうばい)の所に家屋が、急勾配な所に水田が集まる傾向を見せている。
集落内には北股川から取水する水路が張り巡らされているが、取水口となる堰(せき)にはオーバーフロー水を逃がす仕組みが施され、増水時に水路から水が溢(あふ)れにくい構造となっている。水路には年間を通じて水を流し、家ごとに「イトバ」と呼ばれる洗い場を設けている。豪雪地であるため水路は融雪溝ともなり、イトバを家屋の中に取り込んだり、イトバに覆屋(おおいや)を設けるところもある。
芦津集落には同姓の集団「カブ」が複数あり、それぞれのカブが小祠(しょうし)とともに籠(こも)り堂(集会所)を有する。カブは鳥取県内各地でみられる慣習だが、各カブが籠り堂を有する事例はほかに知られていない。さらに、芦津では個人墓を基本とするが同姓の墓は特定の箇所に集中する傾向にあり、カブの結束力の強さを表している。
芦津集落周辺の山並み
芦津集落内
杉赤挿 穂木受取風景